コンチェルトハウスでのB先生のシューベルト歌曲のレッスンを終えてから、ゆっくり歩いて約20分。
N先生とM先生ご夫妻のオフィスに到着。本日2回目のレッスン。
B先生のシューベルト歌曲のレッスンでは殆ど声が出無かったので、これからN先生とM先生に何の曲をレッスンして頂くのか、歩きながら非常に迷っていた。
まず、12月リサイタル予定のシューマン歌曲9曲のうち、少しでも多くの曲のレッスンを受けたかった。
でも、今年から、しかも約1ヶ月半前から始めたブラームス歌曲もレッスンを受ける必要がある。
しかし、去年N先生から、
「あなたは、パミーナの声だ」
と指摘された事から、本当に私がモーツァルト歌劇「魔笛」のパミーナをレパートリーとして歌って行けるのかどうかは、今回のウィーンのレッスンで必ず確認してから帰国しなければならない。
でも、今日の発声と声帯の調子から言って、パミーナのアリアはちょっと音域的に高いかも知れないetc。

途中、M先生がN先生とピアニストEさんと私の分も含めて、ケーキを買って下さった。私はショコラムースを御馳走になった。やはりウィーンのケーキは、とっても美味しい。

ケーキを頂いてからすぐに、発声練習が始まった。
発声練習も去年とほぼ同じ指摘。構え過ぎ。もっともっと全身の力、特に前胸部〜頚部の力を抜くように何度も指摘される。N先生とM先生からは、
「声を出そうとしないで。声はちゃんとあなたにあるんだから、黙っていても声は出る。もっと預けなさい」
ただ、去年よりも幾分力を抜けるようになるのに時間は掛からなかった。大分前胸部〜頚部の力が抜け始めて息が流れ始めると、今度はまた別の指摘がN先生から飛び出す。
「高音域でもっと下の支え(下肢〜下腹部)をしっかりと行うように。声をもう少しまとまった響きにして、自分の立ち位置よりももっともっと向こう側の遠くに自分の声を届けるように。例え発声でも、もっと喜びを以って声を出すように。」
先ほどのB先生のレッスンよりも、かなり声の伸びが良くなった事を実感した。調子が良くなったワケでは無いが、日本での練習でちょっと疲労気味、くらいのコンディションにはなって来た。
N先生からも、時々日本語で、
「そうです。それでいいです」
など、随分修正して頂けた(笑)
それでも、声帯の調子が今一つの時はどうしても高音域の発声を怖がってしまう。すると折角体から抜けた力がまた戻ってしまう。
N先生とM先生が交互に指摘される。
「口を開け過ぎないように。低音域〜高音域の発声で、低音域から口や体を開きすぎると、結局高音域で口や体が開き過ぎになってしまうので、良くバランスを考えて口や体を開くように。声をコントロールしようとしない、自分で自分の声の心配をしなくていい。ただ自然に声が出るに任せれば良い。声の心配をするのは歌っているあなたではなく、聞いている私達の方の役目だから」
ここ位まで発声練習を行って、大分声が響くようになった。先ほどのB先生のレッスンでの不調が本当に不思議になる位声が響き始めた。ただ、まだ少し高音域には怖気づいていたのだが。

今日のレッスンは何を歌うのか、という話になった。
シューマンのリサイタル用歌曲9曲、ブラームス歌曲6曲、モーツァルトのオペラアリア「魔笛」のパミーナと「ドン・ジョバンニ」のドンナ・エルヴィーラを用意して来た事を説明した。中でも、パミーナのアリアは去年のN先生のレッスンでパミーナの勉強をするように御指摘頂いた事をお話しした。するとM先生が、
「シューマンやブラームスのレッスンを始めてしまうとパミーナのアリアをレッスンする時間が無くなってしまうかも知れないから、今日はパミーナのアリアをやりましょう」
という話になった。伴奏は、ピアニストEさんが行ってくれる事になった。
とても緊張していたし、今日は声帯の調子も良く無かったので、幾つかピアニストのEさんにお願いをした。まず、Andanteと楽譜にあるけれどもAdagioくらいのテンポで歌う事、なるべく声量を抑えてピアニッシモで歌いたい事、僭越ながらお願いした。するとM先生が、
「大丈夫よ。このコはそんなに注文しなくてもちゃんと合わせられる、ちゃんと弾けるから」
そりゃ、そうだよな。ウィーンで勉強してるんだし。私がゴチャゴチャ言う事の方が、おこがましいか。
一通りパミーナのアリアを歌った。するとN先生から、矢継ぎ早に指摘が飛ぶ。

「幾らピアニッシモで歌いたいと言っても、最初の歌い出しの声や言葉がきちんと聴こえなければダメ。ウィーンでパミーナのアリアをメトロノームのAndanteで歌う歌手はいない。今の歌唱だって決してゆっくりには聴こえない。逆にもっともっとゆっくり歌う歌手もいる。もっと声のボリューム出して歌う事。♯の音にかなりの注意を払って歌う事。ドイツ語で(ア)になる発音をもっとはっきりと聞こえるように歌う事。アジリダの部分は、時計の振子が揺れるように一つの音を支えて歌う事。きちんとブレスを取り途中カンマの無い箇所でも充分なブレスを取り、その代わりアジリダのブレス後の歌い出しは落ち着いて丁寧に慎重に緊張感が伝わるように歌い出す事」
兎に角ウィーンの先生方は、実にいっぺんに多くの事を指摘される(超苦笑)
何度かアジリダの部分を繰り返し歌い直し(高音域なのに!!!)するが、
「アジリダは一音を通して繋げて歌うように、音階が声で音程を取っているように聞こえないようにレガートに歌われなければならない。」
と、兎に角M先生はさっきのB先生のシューベルト歌曲のレッスンの私の不調を忘れてしまわれたのか???と思う程繰り返された。
ようやく先に進んで、アリアの最後の部分。M先生から、
「Todeというドイツ語は、俗に言う綺麗な声ではダメ!!!もっともっと暗く悲しい深い声が必要。16分音符はもっと前に進み、8分音符はゆったりと死の悲しみを歌うように。パミーナは、タミーノもパパゲーノも一言も話してくれない事に絶望して自分には死しかない!!!と死の決意を歌っているのよ!!!パミーナはねえぇ、そんなに弱い女性じゃないのよ!!!ザラストロに剣も持って立ち向かって言ったり、母親の夜の女王と対峙したり、本当はとても芯の強い女性なのよ!!!!!」
と、激を飛ばされた。
そこで私がやった事は、去年と今年の演奏会で歌ったヘンデルの歌劇「エジプトのジュリアス・シーザー」のクレオパトラのアリア「Se, pieta」で歌ったのと同じ様な音色。これで、N先生とM先生からパミーナのアリアのOKが出た!!!そして、伴奏をして下さったピアニストEさんから、ドイツ語で、

「美しい」

と、私のパミーナを評価して頂く事が出来た。
非常に目一杯の体力を使ったけれど、何とか1時間かけてパミーナのアリアのレッスンを終えた。

N先生からは、
「パミーナはあなたのレパートリーとして何の問題も無い。是非勉強するべきだ」
と御指摘を受けた。M先生とピアニストのEさんも、賛同下さった。
私が、日本のパミーナと言えば、エディト・マティスやバーバラ・ボニーやルチア・ポップが相場で私はほぼ誰にも日本ではパミーナの声では無いと否定された事を改めて説明した。人によっては、バーバラ・ボニーがパミーナのグローバル・スタンダードとまで言われて本当に悔しい腹の立つ思いをした事を話したら、M先生が、

「マティスのパミーナをシュタット・オパーで観たけれど、マティスのパミーナは本当に素晴らしかった。でも、ボニーはパミーナじゃなくて、パパゲーナの声だろう!!!」

と、いとも簡単にはっきり仰った。これには私も非常に驚いた。ここまではっきり言われると何だか悔しい思いをしていた自分が妙にバカらしくなった(笑)
今回のパミーナのアリアのレッスンを受けた事に於いての一番の教訓は、私は歌を綺麗に聞こえる風に歌うのではダメなのだという事。綺麗に歌うのでは無く、美しい音楽を作り上げて行くという発想の転換を自らが主体的に行っていかなければ、去年のパミーナの件のように今後も振り回され混乱する事がまた起きるであろう、という事。
今後は、歌曲にしろアリアにしろ、レジェロやスーブレッドの歌手の録音は極力慎重に、選択肢から外す方向で行きたいと身に染みて実感した。


今後のN先生とM先生のレッスンスケジュールの話をした。
まず、M先生は今後は私が日本に帰国する前日にしかレッスンに来られないとの事だったが、何かあればいつでも電話で連絡して構わないという事。
N先生のレッスンは、今日から日曜日も含めて私が日本に帰国する日の午前中までの計7回!!!!!のレッスンとなった。明日からは、12月にリサイタル予定のシューマン歌曲9曲と、私が緊急に勉強して来たブラームス歌曲6曲、全てレッスンを行う事となった。
これは、ピアニストのEさんが、私が日本にいる時から、ウィーンでのレッスンに持ってくる予定の曲目リストを教えて欲しいとメールを下さった時に私が送った、シューマンとブラームスの歌曲のリストをパソコンでプリントして来て下さった。それを、N先生が御覧になって、

「全部レッスンしましょう」

と仰った。さあ、トンでも無い事になりそうだ・・・・・・・・・・(滝汗)
明日は、まずシューマン歌曲から。


ここで、ピアニストのEさんの事を少し御紹介しておこうと思う。
25歳で、日本の公立高校の音楽科を経てウィーンに留学して7年。小柄な日本人女性。若く見える(笑)
勿論ウィーンの音楽院で勉強して主席で卒業、現在は大学院に在籍。
ソリストとしての勉強もされているのだけれど、伴奏ピアニストも志望されていて今回の私のウィーンでのレッスンの話をM先生より聞いて、伴奏を希望されたとの事。
私の声の事も、
「でも、N先生の所で発声をしてから随分声が良くなった。音楽の作り方が、いい」
と話して下さった。これは、意外(爆)

今日も、ヘトヘト。外に行って食事したり酒を飲みに行く元気はカケラも無かった。
結局、アパートの帰りにスーパーで買い物して自炊する事にした。
今年のアパートはカールスプリッツから歩いて20分くらいはかかるし、去年よりもレッスン内容が格段にハードなのでなるべく休養を心掛ける事にした。
オペラやコンサート、今年は観に行けるだろうか・・・・・・・・・・(凹)

但し、去年ドレスを購入したブティックで、今年はゴールドのドレスをオーダーメイドでお願いした。
それでも500ユーロで作って下さるとの事で、喜んでお願いした。
日本でオーダーメイドしたら、倍額は取られるだろう♪
出来あがるのが、超楽しみ〜(笑)