すぐにB先生のオフィスへ、ピアニストEさんと二人で向かった。私は非常にストレスが蓄積していたので余り喋らなかった。第一、ピアニストEさんのルームメイトの事をあれこれ私が言っても始まらない。Eさんには責任の無い事だし、Eさんは精一杯ピアノ伴奏をしてくれている。

B先生のオフィスに到着。早速レッスン開始。
まずは、昨日レッスンを受けたシューベルト歌曲「Du bist die Ruh」のおさらいから。
B先生のレッスンは、B先生と私とピアニストのEさんの3人だけなので、本当に何も気に病む事も無く何の気兼ねも無く歌う事が出来る。さっきのN先生のレッスンでのストレスMAX状態の反動か、非常に調子がいい(激爆)声も響くし前向きに歌える。本当に心からリラックスして歌う事が出来た。多少のストレスはあって当然だし、全くストレスの無い人間はいないが、ストレスフルというのは非常に宜しく無い状態なのだな、と実感。
「Du bist die Ruh」も、ウムラウトの修正は当然の如く指摘されたけれども、曲そのものとしては、昨日B先生からレッスンを受けた事はかなり実行出来ていたと思う。そのため、この「Du bist die Ruh」のおさらいは、一通り通して終了。でも、恐らく来週の月曜日のレッスンでも繰り返しレッスンして歌う事になりそうだ。B先生はどうやら私がこの曲を歌う事に感心を示して下さっている御様子。私としても、この曲を中声用で勉強して来た事で音域的にも非常に歌う事が楽だし、B先生のレッスン通りに歌うなら、いつでも日本の演奏会に乗せられそうだと感じた。
この曲は、ピアニストEさんの伴奏。相変わらず、B先生は譜面台の真正面約50cmの近距離でがっつり構えている・・・・・(滝汗)

本日の1曲目はシューベルト歌曲「Thekla」から。
昨日B先生のレッスン終了後に本日のレッスン曲を尋ねられた時に2曲「Thekla」「Dem unendlichen」の2曲の楽譜をお見せした時にB先生からニヤリと笑って「Ja!ja!ja!ja!ja!」と歓声にも似た声が挙がった(苦笑)これは、B先生がかなり驚いている、若しくは、臨戦態勢(超苦笑)しかも、全く目だけは笑っていない笑顔で、「簡単な曲では無いね」と一言。
今日もこの「Thekla」のレッスンを開始する前にB先生から、
「どこでこの曲を見つけたのか?」
と質問された。キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ^^;
やっぱり、絶対にB先生から聞かれると思っていた。こんな余りにも超マイナーな曲、私が考えただけでも恐らくオーストリア人でも、ドイツリート専門歌手でもそうそう歌わないだろう・・・・・(笑)B先生のこの質問からも、如何にこの曲が珍しい曲か頷けるというものだ。
私がピアニストEさんにお願いして「ビルギッテ・ファスベンダーのCDで見つけました」とB先生に伝えて貰った。B先生は何度か頷いていらっしゃった。
但しこの「Thekla」に関しては、日本で私が見つけたファスベンダーの録音以外は何も見つける事が出来なかった。シューベルト歌曲に関する本にも曲の解説を見つける事は出来なかったし、増して日本人で歌っている歌手などいない。CDも輸入版のため日本語訳は無し。自分でドイツ語の辞書で調べて大体の大雑把な歌詞の流れは掴めたものの、一体どんな内容のテキストなのか全く解らない。
唯一の手掛かりは、Peters版の楽譜の「Thekla」の副題にドイツ語で「Eine Geisterstimme」と書かれている事、そして詩はSehillerの作であるという事。私がこの曲に惹かれた最大の理由は、副題。日本語に直訳すれば「ある魂の声」である。
私は、どうしても、このような曲に魅かれる傾向がある。

B先生から歌い始める前に一言テキストについてのコメントを頂いた!!!!!
「ヴァィシュタインの魂とその娘のティークラとの対話のテキストによる曲だという事を良く頭に入れて歌うように」
と、ピアニストEさんから。そしてEさんが楽譜を指して、「moll部分が幽霊の部分で、durの部分がティークラさんの部分です」と、教えて下さった。
ようやくこの曲の概要が掴めて来た。要するに、亡くなった魂のヴァィシュタインと、生きている娘ティークラとの対話の曲、という事なのだろう。mollとdurが同じメロディで繰り返されるのである種の対話的要素のある曲だという事だけは理解出来た。
やはり、こういうレッスンはウィーンでなければ受けられない。本当に貴重な経験、貴重なレッスン。
これで私のやる気は倍増!!!!!!!!!!
まず、テキストの朗読から始まった。この「Thekla」のレッスンに関しては曲の細部の修正は行なわれずに、まず通して歌った。B先生的に、私がこの曲をどの程度勉強して来てどのように歌うのかに、関心がおありだったのだろうと考えた。
修正された事は、ウムラウトの発音、幾つかのドイツ語の発音、ピアノ伴奏に合わせた声の強弱の付け方と、GeisterとTheklaのパートのコントラストを付ける事。
B先生から「悪く無い」とのお言葉。これは非常に驚いた(驚愕)このような非常に珍しい曲をテキストの内容も充分な勉強が出来ずにそれでも出来る限りの僅かな練習で、B先生から「悪く無い」という事は、今後きちんとテキストの勉強を行い、曲に対する理解を深めて行く事が出来れば、充分に私自身のレパートリーになり得る、私のシューベルト歌曲の歌唱にはまだまだ伸び代がある、という事にも受け取れる。
この曲に関しては、B先生の最終レッスンでテキストに関しての文献など、幾つかお聞きして帰国しなければならないと決意した。


本日2曲目「Dem Unendlichen」のレッスン。
この曲も結構マイナーな曲である。私が7年程前に、ジェシー・ノーマンのCDを購入した中に入っていた曲。数年前にワルトラウト・マイアーが来日公演でドイツ・リートのリサイタルを行なった時のビデオ映像を持っているが、その時マイアーも歌っていた。が、それ以外の録音は見つけられなかった。ディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウならば録音を行っているだろうけれど、女声の録音はこれくらいだった。
シューベルト歌曲の中では非常に珍しい、かなりドラマティックなレチタティーヴォから始まり、流れるような壮大なメロディーへと移って行く。ドイツ・リートというよりも寧ろ、オペラ・アリアに近い。日本で一度だけ谷岡先生にレッスンして頂いた時にも、「この曲ってどういう風に造られたのかしら?オペラ・アリアなのかカンタータなのか、そんな感じの曲よね」と仰っていた。
この「Dem Unendlichen」に関しては、まず「Geistliche Lieder」と記されている。そして、日本のシューベルト歌曲に関する本に若干の説明書きはあったものの、テキストの詳細は一切記されていない。
ただ、7年前にジェシー・ノーマンの録音を聴いてから、ずっとず〜っとず〜〜っと、この曲を歌えるようになる事を目標にして来た。谷岡先生とハリセン先生にレッスンを受ける以前のドイツ・リートの先生にも一度だけレッスンを受けた事がある。
しかし、やはりシューベルトの歌曲でこれだけドラマティックなオペラ・アリアのような、しかも非常に難しいレチタティーヴォがある曲をそうそう簡単に演奏会本番に乗せられるような歌唱力は私には無かった。
去年初めてウィーンでB先生にレッスンを受けて、「来年こそはこの曲のレッスンをB先生に受けたい!!!」と強く願っていた曲でもある。このような曲は、やはりB先生にレッスンをして頂きたかった。念願が叶った。
最初のレチタティーヴォは正確なリズム、それもかなり細部に渡ってリズムやテンポの修正をされた。
それと、私自身ず〜〜〜っとジェシー・ノーマンの歌唱を参考に勉強、練習して来たのだけれど、B先生からは私が考えていた以上に、大切な歌詞を強調して、相当なマルカート、アクセントを付けて歌うように指摘を受けた。レチタテーィヴォで私が考えていた以上に、多めにタップリとブレスを取り、決して歌い急がないように自由に歌わせて頂く事が出来た。
私自身、自分に出来得る限りドラマティックに歌った。遠慮無し!!!まるで、ヘンデル歌劇「エジプトのジュリアス・シーザー」のクレオパトラのアリア並みに、自分の持てる全ての声で歌った、という感じ。
アリア部分は、ドイツ語の母音をかなり長めに取る事、8分音符のリズムを若干修正された事、フレーズの流れに遅れないように歌い出しをインテンポでしっかりと入る事、ウムラウトの修正は指摘されたが、これもB先生から一言、「悪く無い」と言って頂けた!!!!!!!!!!これには流石に心の中で、ガッツポーズ\(^o^)/

7年間、ひたすらジェシー・ノーマンを目標にして諦めずにこの曲に取り組み続けて来て、本当に良かった。
ピアニストのEさんに、B先生に「7年前からこの曲のレッスンをきちんと受けたいと思い続けて来て、今日レッスンを受けられて本当に嬉しい」とお伝えしてほしいとお願いした。EさんがB先生に伝えてくれると、B先生も喜んで下さった。
これからも、諦めずに地道にジェシー・ノーマンを目標に、色々な曲に取り組んで行きたい。
諦めない事って、本当に大切な事なんだな、と実感する事が出来た。本当に充実した幸福なレッスンだった。
流石にこの2曲は非常にマイナーな曲のためか、B先生が全て伴奏された。
しかし、やはりB先生は凄い。流石にシューベルト歌曲の専門家の中の専門家。
私がレッスンに持って来た曲は全てきちんと伴奏される。弾き損じ、無し。私はレッスン時に楽譜のコピーをB先生にお渡しするが、レッスンが終わると楽譜は全て返される。
シューベルトの名曲なら当然の事であろうが、今日レッスンした「Thekla」「Dem Umendlichen」などの曲もきちんと知り尽くされていらっしゃる。
日本でこのようなレッスンは、望んでも不可能だろうと考える。


今年、B先生のお土産に、ウィーンの人にも好まれそうな日本のブランドの上品なお菓子を!!!と思い、上野・風月堂のゴーフルを差し上げたのだけれど、B先生が「とても美味しいお菓子だった」と仰ってくださった!!!流石、上野の老舗、風月堂〜〜〜♪


今日の最初のN先生のレッスンでの極度のストレス状態と、B先生のレッスンでの目一杯限界以上の歌唱とで、レッスンが終って帰宅した時には食事を取る事も出来ない程疲労困憊だった。
本当なら、今日はウィーン国立歌劇場でドニゼッティ「ルクレツィア・ボルジア」のプレミエを立ち観に行く予定でいた。グルべローヴァの生の声を聴いてみたいと思っていたのだが、止めた。
こんなに疲れきっていたのでは明日のレッスンに差し支える。
明日は日曜日だが、午前中にN先生のレッスン、午後からはピアニストEさんとのピアノ合わせを予定している。疲労のため声に支障を来すのは御免だ。
私は、ウィーンにオペラ鑑賞に来た訳では無い。
レッスンを受けに来たのだから。
オペラは時間があれば別の演目を観る事にした。
レッスンから帰宅してから一眠りしてしまった。目が覚めたら、夜10時を過ぎていた。
軽く食事をしながら、今日のレッスン日記を書いて、早々に休んだ。
今回、まだ一度も外のレストランで食事していないし、酒を飲みにも行けていない。
ちょっと寂しいが、今年のウィーンでのレッスンは去年に比べて格段にハードだという事と思い、休養を心掛ける事にした。