今日は午後1時からN先生のレッスン。シューマン歌曲。今日も通訳のソプラノYさんがレッスンに通訳に来るとの事だったが、もう気にならなくなった。別にYさんに好印象を持ったとかそういう事では無く、自分自身のペースを取り戻した、という事。昨日の夜、ウィーン楽友協会にツィンマン指揮ブラームス交響曲第1番とブラームスピアノ協奏曲第1番のコンサートを観に行った。余りにも素晴らしい美しい演奏会だったので、楽友協会で非常にに大きなパワーとエネルギーを頂いたような感じ。美しい音楽というものは、本当に魂の栄養になるものである。

シューマン歌曲「Requiem」から。N先生から「Requiemとはどういう曲ですか?」と尋ねられた。私は、
「死者の魂を慰めるためのミサ曲です」
とお答えした。N先生から、その通りです、との御答が返ってきた。亡くなった妹の為に歌う曲だ。間違える筈も無い(苦笑)
発声も、大分体全体の力を抜く事が早く出来るようになって来たのか、時々体の力の抜き具合が足りない事と口を縦に下に開く事を指摘はされたが、スムーズに進んだ。
シューマン「Requiem」は、前回のレッスンは相当に酷かったとは言え2回目のレッスンである事と、昨日ピアノ合わせとテキストのディクションを行なった事で、レッスンでの歌唱の流れとしては悪く無かった。相変わらずウムラウトの発音と、フレージングをもっともっと大きく取る事と、曲の中間部分の速度をもっともっと前に進める事を指摘されたけれど、あっさり終了(誤爆)N先生、ちょっとあっさり進み過ぎでないですか???と疑問に思うくらいにすぐレッスンが終わってしまった。

次の曲は、N先生的には私の12月のシューマン・リサイタルの曲順通りにレッスンするおつもりの様子だったけれど、私とピアニストEさんの強い希望(爆)で、シューマン「Widmung」のレッスンを見て頂いた。でもこの「Widmung」も指摘された事は意外と少なかった。中間部の曲調がレガートに変化するメロディでは、いきなりテンポをゆっくりにするのでは無く飽くまでもインテンポで歌う事を強調された。多くの有名歌手がこのフレーズを相当なLangsamで歌っているのだが、N先生の指摘は大きく違うものだった。
「ピアノ伴奏で、きちんと音楽がレガートに聴こえるような曲の造りになっているのに、わざわざテンポをゆっくりにする必要性が無い。音楽はゆったりと聴こえるように既にシューマンが造り上げているのだから、そこはインテンポで歌われるべきだ」
とのN先生の御指摘。確かに、仰る通り。楽譜に書いていない事をわざわざ歌手のモノマネをしてまでやる必要性は無い。クラシック音楽という再現芸術は本来そのように在るべきなのだろうと改めて実感させられた。
フレージングを長めに取る事は必用だが、ブレスはしっかりきちんと取るようにブレス箇所を増やしブレスの位置の確認を行う。インテンポできっちりと歌う代わりに、楽譜にritの指示があるフレーズは、充分にたっぷりとritを行なうようにとの御指摘。その他はドイツ語の発音を若干修正されて、この曲も終了。余りに早すぎないか???名曲だよ????と、些か不審に思う(爆)

今度はN先生の御希望で「女の愛と生涯」から「Er der Herrlichste von allen」をレッスンする事になった。もう、この曲はリサイタルの最後に歌う予定で、昨日もピアニストEさんとピアノ合わせ練習してないんだけど・・・(汗)あっちゃ〜・・・。
この曲は、まずN先生から「どのようなテンポで歌いますか?」と尋ねられた。谷岡先生とのレッスンで、ジェシー・ノーマンのように少しゆったりめのテンポで歌った時に、
「この曲だけならいいんだけれど、女の愛と生涯という全曲を考えたら、今のテンポは少しゆっくり過ぎる」
と指摘された事があるので、谷岡先生のレッスンでは慣れないながらも務めて早めのテンポで歌うようにしていたので、N先生にも、
「私は少しゆったりめのテンポで歌っていたんですけど、この女の愛と生涯という曲全体から考えると、私の歌うテンポでは少し遅すぎて他の曲がもっともっと緩やかなテンポで歌わなければならなくなるという事だったので、少し早めのテンポで歌うように心掛けています」
とお答えした。それに対してN先生も同じ御意見だったので、早速歌唱に入る。自分にしては少し早めのテンポで歌う。
音符が動くフレーズもきちんとインテンポで歌う事、楽譜にritと書かれている箇所以外は全てインテンポで歌う事、幾つかドイツ語の発音を修正された。
しかし、この曲で最もN先生から一番に指摘された事は、
「もっと気持ちを前に、ドキドキしながら、恋をしているそのもので歌って下さい。あなたの歌い方では、普通過ぎる!!!」
と仰りながら、N先生ご自身で歌詞を読み始めた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(滝汗)
「Er! der Herrlichste von allen! wie so milde! wie so gut!!! Holde Lippen! klares Auge! heller Sinn! und fester Mut!!!」
と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ア然)N先生、若過ぎ(爆死)私はN先生を見て大爆笑だったのだけれど、「20年位前の事を思い出して頑張って歌ってみます・・・」とだけお答えした。するとN先生が、
「僕もほんの少し前の事だけど、ちゃんと思い出しながら歌っているよ♪」
との事(無言)これも、もう一度一通り通して歌って、N先生からまずまずのOKが出た。マジですか???これ、すんげえ難曲ですよ???と思いつつ、次の曲へ。
しかし、ピアニストEさん、この「女の愛と生涯」は一度全曲通して伴奏を弾いているとの事で、ブレスの位置からritのタイミングから何から何まで、私が何もお願いしなくても、完璧。本当に25歳とは、思えない。

次は、予定通り昨日ピアニストEさんと合わせた「Nussbaum」取り敢えず一通り通して歌って、N先生から「もっと自然に穏やかに。ピアノと歌がデュエットで歌うように。少し歌に力が入ってしまっているように思う」と指摘された。歌のメロディは穏やかで繰り返しが多いけれど、ピアノ伴奏はとても動きがある。歌詞のためか歌のリズムが多少不規則なためもっと正確にリズムを取るように指摘された。ウムラウトの発声はもう、どの曲でも繰り返し修正、これは仕方が無い。兎に角、ritと書かれている箇所以外はきっちりとインテンポで歌う事を何度も指摘される。これがシューマンの音楽の御約束という事なのだろうか。この曲で一つとても重要な事をN先生から御指摘頂いた。3ページ目最後の方の歌詞、
「flustem von Braut'gam und nachstem Jahr というのはどういう意味だと思いますか?」
と尋ねられた。私は素直に歌詞の和訳通り、来年の事と、花婿からの囁きと・・・と答えた所、N先生から、
「これは、来年赤ちゃんが出来ますよ、という意味です」
と教えて頂いた。これにはかなり驚いた。しかし、私が購入したディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウ著「シューマンの歌曲をたどって」にも確かに、この曲「Nussbaum」は、ロベルト・シューマンがクララとの結婚をクララの父ヴィークとの裁判で争っている間に書かれた曲で演奏旅行中のクララに宛てた書簡に一緒に添えられて「そっと、きみ自身のように素直に、歌ってみてください」とクララへの手紙に書かれていた、という記述があったので、私が、
「つまり、この曲はクララとの結婚前に既に作曲されていた曲なので、ロベルトがクララに、来年自分達が結婚して赤ちゃんが生まれる、という事をクララに伝えたという事ですか?」
質問したら、N先生から、そういう事です、と答えられた。この時代は結婚したら1年後には普通に女性は子供を産んで、家庭を守るのが当たり前の時代だった、だから、この歌詞、このフレーズはとても大切に歌って欲しいとN先生から教えられた。
やはり、こういう事はウィーンでなければ勉強出来なかっただろうなあぁ・・・と実感する。

今日のN先生のレッスンは、ここまで。
今日のレッスンは結構難しい曲のレッスンの割に、至極スムーズに進んだ。勿論、まだまだ勉強して改善して修正していかなければならない部分は沢山あるが、今の私の勉強の方向性としては継続して頑張って行くように、という事なのだろうと考えた。
N先生に「シューマン、行けそうでしょうか?」と尋ねたら、「大丈夫でしょう」という事だった。これは、今年のシューマン・リサイタルに大きな弾みになるN先生からの一言だった。何とか、行けそうなシューマン歌曲。

これから、ピアニストEさんとお昼を食べてからすぐにB先生のレッスンに向かう。