これは良し悪しの問題では無い。適性と専門性の問題である。
しかも、私のような大学で専門教育を受けていないし留学もした事が無いような人間に関して言えば、昨日のシュワルツコップの話では無いが《歌うなど勘違いも甚だしい》という事にもなりかねない。相手がどんなに専門性の高いピアニストであって私が如何に不勉強なアマチュアであっても、一緒に音楽を造り上げるという作業が出来るピアニストでなければ困る。私達アマチュアは決して不勉強を棚上げしているのでは無く限られた時間と年齢とに向き合いながらそれでも好きだからこそスローペースで成長して行くために歌い続けているというのが、少なくとも私の現状であると言わざるを得ない。柔軟性に乏しく許容範囲の狭い至高のピアニストの方々には是非ともソリストとして御活躍頂きたい、という事である。早い話が、自分が伴奏やアンサンブルが好きか向いてると思ってるピアニストでないと、私はお願い出来ない可能性が高い。自分はプロだから報酬を貰えればアマチュアの伴奏もやりますよ的な《プロ志向》のピアニストではまた3月のような最悪の結果を招きかねない。それだけは避けたい。初リサイタルなら尚更避けたいと心を痛める。
要するに信頼関係の問題か。伴奏ピアニストとして演奏しているなら専門知識もあるし、私もピアニストから学ぶ所が大きい事は百も承知で学ぶ事も目的の一つだ。だが私の側からピアニストを見て伴奏ピアニストとしての適性評価など不可能な話だ。だから谷岡先生もオクレール先生を推したのだと思う。
ただし、他にドイツ歌曲の伴奏ピアニストの候補が全く無い訳でも無いが、幾ら伴奏をお願いしたからと言って受けて頂けるとは限らない。それ程悩んでいる時間は無いので早めにアプローチをしなければならないし、オクレール先生という選択肢は多大だ。このブログをお読みのピアニストの方々は反論も多々あるかと思われるが、伴奏ピアニスト側から歌い手を評価もしくは批評するというのも余り聞いたり見たりした事が無いのも事実。ピアニスト側の言い分は多々おありと重々承知しているが、まあこういう軋轢もあるので現在悩みに悩んでいるというのが現状だ。技術か経験か適性か、一つに的を絞る事が出来る問題では無いし、クラシック音楽という古典芸能・伝統芸能を自分のレベルに引き下げるような下世話な真似はすべきでは無い。自分の歌は勿論の事伴奏ピアニストも含め妥協する訳にはいかない。