余りレッスン時間は残っていなかったのだが、レチタティーヴォの細かい事や楽譜の詳細に関しては殆どコメントは無く、発声についてのみ注意を受けた。発声に関しては、これだけはどうしても時間が掛かる。仕方が無い。地道に気長に我慢強く取り組んで行く以外に他に方法が無い。一夕一朝には行かない。まだヘンデルのリサイタル本番までにはかなり時間があるので、細かく丁寧に発声を仕上げながら譜読みして行くしか無い。それは自分でも重々承知している。レッスン終了後、それでもミルヒー先生が一言言って下さった。
『良くこの4曲をここまで勉強して来たね。大変だったでしょう。』
このミルヒー先生の言葉を聴いた時、何だか涙が零れそうになった(苦笑)嬉しかった。今は辛い事が多過ぎるせいかも知れない。私はただただ必死で勉強しただけだったけど、こうしてミルヒー先生から改めて言葉で励まされると本当に救われる思いだった。人生、全うに頑張っていればたまには良い事あるもんだなあぁ・・・と何だか切なくなった。以前親友に話した事だが、きっと報われる努力なんてたった一握りでそれも余程正しい努力以外は報われないのが当然だから、報われた努力だけが正しい努力だと考えるべきだと。
人間は欲張りだから何でも努力したら報われ無いと不平不満を言う。でも、きっと神様なんかから見れば幾ら努力を頑張ったとしても理に叶っていなければ報いる必要なんか無いかも知れない。報われただけ有り難いと謙虚に感謝しないとバチがあたるよなあぁ(苦笑)そういう訳で、ミルヒー先生が私の努力を労ってくれた事はホントに涙が出そうな位嬉しかった。しかも候補に挙げた10曲全曲許可下さったのだ。私如きのアマチュアには本当に大変に身に余る光栄である(笑)ただのクラシック音楽好きのアマチュア歌手が、ヘンデルのオペラアリア10曲のリサイタルを許可貰えるなんて、多分そこいら辺に沢山転がっている話では無い。本当にミルヒー先生には感謝しても感謝しきれない位だがそれでも精一杯感謝している。
ミルヒー先生にはヘンデル10曲のプログラムを何度も聞かれた。クレオパトラだけは今後私自身のレパートリーとして持って行きたい事も伝えた。それでも尚、何よりもヘンデルのリサイタルの先には、ヴェルディのカロノメやE Stranoが常に存在している。どちらの曲め今の私には歌う事が出来ない。歌えるようになる為に自分自身に課した試練がヘンデルのオペラアリア10曲である。頑張るしか無い。