ハリセン先生はその名の通り容赦無し(笑)体が重くてついて行かないが、今現時点で出来なくてもとにかく歌うしか無い。所々、ピアニストに指摘されたコメントを交えながら細かいチェックがされた。ハリセン先生に一つ指摘される度毎にリサイタルに対する不安が増して行くのが判る。ホントにこんな事でリサイタル本番歌えるのだろうか。ハリセン先生から『野薔薇の表現が乏しい』『湖上にての高音が当たっていない』『月に寄せるの低音が半音低い』『トゥーレの王のブレスの取り方がまずい』『菩提樹とセレナーデの高音が強すぎる』『フィデリオのアリアの声の響きが硬くて息が流れていない』等々。大変ごもっともな御指摘を山のように受けた。私は表情も段々暗くなるし、体が動かなくなって来る。9曲レッスン終わった時には息切れしていた。
レッスン終わって谷岡先生から『少し休んだ方が良いのでは?』と進められたが、不安で不安で休むなどとんでも無い話である。もう2ヶ月は休日もスタジオに通っていて、1日家にいた記憶が無い。ようやく9曲暗譜出来たが予定よりも1ヶ月も遅れてしまった。リサイタル本番まで既に1ヶ月切ってしまったというのに、まだこんなに沢山指摘されていては話にならない。
レッスンが終わって先生宅を出た時、涙が出た。こんな事では全然リサイタルに間に合わない。
レッスンが終わって今パスポートを取りに来ている。その後また川崎に戻ってスタジオを3時間予約している。どんなに疲れていても苦しくても辛くても、出来て無い・歌えていない事には何等変わりが無いのだから練習するしか無い。これからスタジオに向かう。
谷岡先生にリサイタルMC用の原稿を見て貰ったが『余りにも客観的過ぎて、あなた自身がどんな曲だと感じて歌うのかが見えて来ない』と指摘された。書き直しとまではいかないが、もう少し感じた事が出て来た方が良いという事になった。
どうやら、リサイタルを甘く見ていたようだ。もう今は何も考えられないので、ひたすら今日指摘された事を練習して更に暗譜を確実にして行くしか無い。
もう、リサイタルは中止する訳にもいかないのだから。
とても疲れた。