先日パスポートを作りに立川に行った時に《ドキュメント・カラヤン・イン・ザルツブルク》のDVDを見つけた。この映像では、ザルツブルク音楽祭でカラヤンが私の最も尊敬し愛するジェシー・ノーマンとワーグナー楽劇【トリスタンとイゾルデ】から「イゾルデの愛と死」が演奏されている。これはカラヤンとノーマン初のカップリングである。私は、もう15年位前に合唱団の副指揮をしていた人が私がノーマンの大ファンである事を知って、部分的にビデオに録画してくれた映像を頂いたのだが、今回このDVDが発売されるという事で私が見ていない映像もあるので早急に購入した。勿論、カラヤンとノーマンの映像を楽しみに胸を高鳴らせながら購入した。この映像のザルツブルク音楽祭の最後【イゾルデの愛の死】の演奏の後でカラヤンがノーマンの両手にキスする。ノーマンが涙ぐむ。その場面を見ると私まで涙が流れる。私はノーマン来日時演奏会の後に雨の中1時間楽屋口で出待ちしてノーマンと2度握手して貰ったから。やはりノーマンのワーグナーは素晴らしく、私が持っている15年前のボロボロの映像よりも遥に鮮明でしかも私が貰ったビデオには無い映像もあり、購入してから既に十数回は見ている。
私は元々親父がクラシック音楽好きで、小学生の頃からカラヤン指揮ベルリン・フィルのベートーベン交響曲第3番【英雄】第5番【運命】第6番【田園】などを聴いて育った。成人したら一度だけでも大枚はたいてカラヤンのコンサートを聴きに行くと心に決めていたのだが、私が学生でまだ青森にいた時にカラヤンは死んでしまった。だから私にとってカラヤンという指揮者は現実感が薄い。それでも私にとってカラヤンのベートーベンは格別だったので、やはりドイツ系作曲家の曲はまずカラヤンを聴く事が多い。今回このDVDでは特にリハーサル映像が大半を占める事が特筆すべきだと言える。ザルツブルク音楽祭モーツァルトのオペラ【ドン・ジョバンニ】、バッハのミサ曲【ロ短調】、ワーグナー歌劇【タンホイザー】序曲、そしてワーグナー楽劇【トリスタンとイゾルデ】からアリア《イゾルデの愛の死》。カラヤンのプライベート映像も交えながら約1時間半の映像なのだが、何よりもカラヤンがカラヤン自身の言葉で音楽を語るというカラヤンの人間性と音楽性に非常に驚かされたし、非常に今まで以上に興味が沸いた。カラヤンという人間がとてもシンプルに写し出されている。無論、そのような演出であるかも知れない。