特にこの【トゥーレの王】に繰り返し出て来る3連符で何度も繰り返し止められた。どうやらこの3連符の捉らえ方を間違っていたようだ。B先生から繰り返し、
『もっと落ち着いてゆっくり3連符を取るように』
と指摘されるが中々出来ない。リズムの取り方も不安定。やはり楽典やソルフェージュを勉強していない事はこんなに痛いものか・・・・・と愕然とした。これは昨日の2日目のレッスンでB先生にも言われ、日本でも谷岡先生にも言われた事だが、シンプルなメロディの有節歌曲ほどドイツ歌曲の中でも難しい曲は無い。要するに、歌詞が大事で歌詞の表現が非常に重要だという事だ。そこでB先生からチェックが入った。
『まずこの詩を読んでみて下さい』
・・・・・・・・・・。
ドイツ語を話す事も出来ない日本人がオーストリア人のシューベルト歌曲の専門家の前でゲーテの古典の詩を朗読する。アナタ、やった事ありますか?幾ら最終レッスンとは言え私がドン引きどころか石になった事は説明の必要も無かろう。無論、リサイタル前にこの【トゥーレの王】のディクションはかなりやった。と言っても比較論は成り立たないのでどの程度かは私の与り知る所では無い。本場のレッスンって本当に厳しい、悲しくなった。
恐る恐る【トゥーレの王】の歌詞をドイツ語で読み上げる。3番まで読み上げる。読み終わったらB先生が、
『今あなたが詩を読んだように歌って下さい』
そう一言言われた。今ほどドイツ語が話せない事やドイツ語を勉強して来なかった事を後悔した事は無かったと思う。仕事の忙しさは言い訳にはならない、とすれば私はこれからどうやって多くの自分自身のキャパシティ以上の勉強をこなして行くべきなのだろう。今迷っている暇は無い。その後もB先生からは矢次早に指摘が飛んで来る。
『歌詞やメロディが変わる時は必ず曲の情景が変わる時なのだから、歌い手が何らかのアクションを起こさなければならない。トリルや装飾音は落ち着いて歌う。ドイツ語は最初の子音を大切に、決して強くし過ぎないように歌う。大切な言葉にポイントを置いて丁寧に歌う。ドイツ語の母音を長めに取って歌う。テキストをブレスではなく言葉の意味で区切って分けて歌う』
連続3日目のレッスンでかなり学習能力の低い私にもB先生は同じ事を何度も何度も丁寧に説明指導される。自分自身でも少し気付く事くらはいは出来るようになった。自分でマズい!と思うと歌を止めてB先生に合掌している事が増え、その度B先生に笑われた。