ウィーンでの発声レッスンから、ウィーン渡欧以前よりもかなり体が楽に使えるようなカンジがしていた。特に中低音域の踏ん張りが効くようになった気がした。高音域⇔低音域がもっともっとスムーズにレガートになれば申し分無いのだが、そんなに簡単には行かない(苦笑)それでも、以前に比べてかなり自由に体を使って歌えるようになったし、何よりミルヒー先生から、
『【セルセ】、かなりいいカンジになったわね〜!』
と言って頂けたので、ウィーンでのレパートリーの暗〜い悲し〜いハナシは半ば忘れそうになった(笑)【アルチーナ】も【セルセ】も、今の調子で勉強・練習して行くようにミルヒー先生から言われた。レッスン時間は既に1時間を超えていたのだが、ミルヒー先生が『もう1曲やろうか!』と言って下さったので、最後に【エジプトのジュリアス・シーザー】のクレオパトラの短いアリアをいつものように歌った。私は他に歌った3曲と余り変わらないようにウィーンでレッスンを受けた発声をなるべく出すよう心がけながら歌い出したのだが・・・たった2小節で歌を止められた。正直驚いた。ミルヒーは仰せになった。
『あなたはもっともっと太くて恐い声が出るはず。これはクレオパトラの曲なのよ』
ミルヒー先生は続けた。『あなたの声は、クレオパトラにしてはまだまだ可愛い過ぎる。まだまだもっと出るはずなのよ。日本でならこの歌い方、この声でもいいのよ。でもね、目指すものはもっと高いもの、いつも世界を目指したいのよ!!!別に世界にデビューする訳では無いんだけれど。でもね、出るようになるはず。それを目指しましょうよ!!!』
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ミルヒー、私がウィーンに行って来た事は知らないはずなんだけど。流石、私がミルヒーとあだ名を命名しただけの事はある。マジで半端無い。これはホントに厳しい。ほんの少しでも私が進歩したらまるで重箱の隅をつつくように更なるレベルアップを課すミルヒー先生。私が思わず唖然としながら石になった事は言うまでも無い。大体にして《出来るように頑張りましょう》じゃなくて《出来るはず》って、一体何なんだ。それはミルヒーにはミルヒー先生なりの根拠があるのだろうけれど、私自身は困り果ててしまった。
理由?ウィーンではっきり言われて帰って来たばかりなのだ。
『あなたはヨーロッパではリリック・ソプラノです』
と!!!ミルヒー先生の仰っしゃり様ではホントにスピントかドラマティコの基準だ。それはどうなんだ?