恐らく、ウィーンに行く前に行った初リサイタルの時のレッスンよりもかなり高度な要求をされていると思う。重要な事は、これをウィーン帰国後の一過性の現象に終わらせてはならないという事である。かなり厳しいがそれが今の私自身の一番大きな課題だと改めて得心した。果たして私にそれが可能だろうか?
2曲目【菩提樹】もほぼ同じ指摘を受けた。ドイツ語がかなり自然に近い形に近付いて歌えるようになった事で曲のフレーズが繋がりウィーン以前よりもよりはっきり丁寧に歌詞を聞き取る事が出来るようになったという事である。ただし、ウィーン以前には余り問題とは意識されなかった新たな課題が表面化した。高音域である。私が歌うドイツ歌曲は高声用を中声用に移調したり、もともとが男声用の曲を歌っている事が少なくない。本来中高音域のパワーが強い事もあり、特にウィーン帰国後の感じでは高音域だけが《出し過ぎ》に聞こえてしまう事が気になると谷岡先生から指摘された。やはり問題はいつでも発声だ。ウィーンでM先生も仰っしゃっていたが、歌い手にとって発声は永遠の課題なのだ。【菩提樹】に関しては、低音のポジションをもう少し高く取る事でかなり改善されると指摘された。
3曲目、中声用にキーを下げた【トゥーレの王】谷岡先生の前でこの曲を中声用で歌うのは初めて。谷岡先生もかなり楽しみにして下さっていたらしい。私自身もの凄く緊張した(苦笑)勿論、この【トゥーレの王】のゲーテの歌詞を朗読したエピソードも谷岡先生にお話しした。大笑いされた。しかし、この中声用キーの【トゥーレの王】を歌い終わった時に谷岡先生はたった一言だけ、
『うん、これは何も言う事は無いわ』
と仰せになった。余りに驚いて一瞬石になった。恐るべし、コンチェルトハウスのB先生。改めてシューベルト歌曲の専門家にしてドイツ歌曲の伴奏者でシューベルトブントの指揮者でコンチェルトハウスにオフィスを構えるB先生の偉大さを背筋が凍る思いで実感した。今まで10年近く声楽を習って来たが《言う事無し》と言われたのは多分初めてだと思う。しかも3連符などの歌い方は谷岡先生が、
『私もそれ、頂きってカンジ〜(笑)』
と仰っしゃっていた。ホントに驚いた。
最後に【こびと】を歌った。谷岡先生は、
『きちんと伴奏を弾けなくてごめんなさいね』
と繰り返していたが、修正されたのはやはり突出しがちな高音域だけだった。無論この【こびと】は今後も自己勉強が大切だ。