久しぶりに歌ってとても優しい気持ちになる事が出来た。褒められたからでは無い。私自身がちゃんと歌を歌い続ける道程が見えたからだ。無論今だって自分がレオノーレやアガーテやワーグナーを歌える声などとは微塵も考えてはいない。でもそれ以上に、谷岡先生もウィーンのM先生も私の大切な人が、私自身にレオノーレもアガーテも例えワーグナーであっても歌う事を諦めないで頑張って歌い続けて欲しいと心から思ってくれているのだという事、どんなに不可能だと私が思った事であっても必ずしも不可能とは限らないかも知れない事、誰かが私自身の歌声を待っていてくれているのかも知れない、そう信じる事が出来るのならば例えワーグナーであっても私は頑張る事が出来るかも知れない、それがどんなに不可能な事だと思われる事であったとしても。何となくそんな気持ちになってしまった今日のレッスンだった。私の好きな曲を出来るだけ沢山楽しんで歌う事。M先生は何故私にそのように話して下さったのだろうか。私自身今は分からない。きっと、私がその本当の意味を心から知るまではもっともっと永く多くの時を経なければならない。それでも尚私は、歌に関してはとても幸せな人間だと感謝している。